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生成AIを活用してより良い防災提案書を作成

2024/11/18

生成AI学習支援
小学校
国語

葛飾区立東金町小学校(東京都)

学校名:葛飾区立東金町小学校(東京都)
学年:小学校6年生
教科:国語
単元(題材):論の進め方を工夫して書く

      (学習材「いざというときのために」(東京書籍「新しい国語 六」)
活用場面:提案書を書くための情報収集と、書いた内容を吟味・校正

■授業概要

教科書の教材「いざというときのために」(東京書籍「新しい国語 六」)において、「身の回りの人たちに向けた防災についての提案書」を作成します。単元の目標「筋道の通った文章となるように、文章全体の構成や展開を考えて書くことができる」を目指して、提案書の書き方を学び、実際に作成し、発表までを全5回の授業で行いました。 児童それぞれが提案書を作成する際に、生成AI との対話を通して材料やアイデアを得たり、また自分の書いた提案書をさらに良いものにするために生成AIを使って吟味・校正を行ったりしました。


■先生が設定したシステムメッセージ

tomoLinks では、生成AI のふるまいや回答パターンを先生が事前に設定しておくことが可能です。 今回、先生は下記の内容で設定しました。

あなたは小学校の先生です。児童からの質問に対して答え、ヒントは言わずに、児童に考えを求める質問を返してください。小学5年生にも分かるように回答してください。


■授業の流れ

(1時間目)学習の見通しを持ち、提案書の書き方を学ぶ

・5分間チャレンジとして、「給食委員会として全校に食べ残しを減らす提案を呼びかける文章」を書いてもらい、その後児童に「提案文を書くために難しかったことはどんなところか?」をあげてもらいました。

・教科書の提案文を読み、「書き手が工夫していそうなところ」「自分も取り入れたいと思ったところ」などを各自ワークシートに書き出し、話し合ってもらいました。

・先生が提案書の書き方と工夫についてまとめ、説明しました。



(2時間目)題材について調べ、情報を整理する

・知っている災害をあげてもらい、その後、自分がどの災害についての備えに関する提案書を書くかを決めてもらいました。

・生成AIも活用しながら、提案書を書くための情報を集め、メモを作成してもらいました。

・その後先生から、1時間目で説明した提案書の書き方や工夫について点について改めて説明し、「生成AIが作成した文章は、これらの提案書の書き方や工夫を網羅しているだろうか?」という問いかけを行いました。 生成 AI では網羅できない部分を、インターネット検索なども活用して補うことで、より良い提案書を作成するように伝えました。



(3~4時間目)提案書を書く

・2時間目で作成したメモを元に、提案書の作成を進めてもらいます。 引き続き生成AIを活用して、情報収集や文章の校正を行います。

・生成AIを使う際のポイントについて、先生から改めて説明しました。
 - 生成 AI から提案された内容をすべて書くのではなく、その中から自分が良いと思うものを選んで書く
  – 児童と生成AIの対話例の紹介(tomoLinksの対話履歴確認機能を使用) など


(5時間目)提案書の発表と振り返り

・作成した提案書の発表を行ってもらいました。

・発表を聞いている児童には、発表を聞いて考えたことや感じたことを聞きました。




児童の感想 (アンケートより)

・提案文を書くのはとても楽しかったです。最初は提案文は生成AI の言葉をそのままコピペすればよいものだと考えていましたが、それは違くて自分の文章を付け足した方がすごく分かりやすくなりました。今度は他のお題でも提案文を書きたいです。

・3つや5つにまとめてくれてそういう考えがあるんだとわかりました。

・自分だけだったら考えられないような文を生成AIがつくってくれたからです。


先生の感想(葛飾区立東金町小学校 折田 真一 先生)

■生成AIを授業で活用しようと思ったきっかけを教えてください。

 生成AIの学習での使用について、中学・高校では既に取り入れられているという話を見聞きしており、 何かしら小学校でも生成AI を活用して授業に取り入れられないかという点に非常に関心があったというのがきっかけです。


■生成AIを授業で活用した感想を教えてください。

 読書感想文や提案文の作成において、AI を使用すると文章作成スキルが育たないという否定的な見方もありましたが、実際にAIを授業で試してみると、適切に活用すれば非常に有効なツールであると感じました。

 例えば、今回の授業においては、学習の早い段階で、「書く目的」「書き方」「書いたものの評価方法」を共有し、提案書の書き方をあらかじめ規定しておいた上で生成AI を使用したことが効果的であったと考えています。結果、子どもたちが常に振り返る視点を持ち、「生成AI の文章そのままではいけない」「最後は人間の力でまとめる必要がある」という実感を持ってくれた点は非常に価値があったと感じています。


■生成AIを授業で活用した効果を教えてください。

 従来、作文指導においては授業中に全員を平等に指導することは難しいという課題がありましたが、AIが児童の質問に答える役割の一部を担ってくれたことで、児童が各々サポートを受けながら文章を書き進めることができました。また教員も、個別のサポートが必要な児童により集中することができました。

 またtomoLinks では、児童と生成AIとの対話内容をExcelで出力できるので、授業後に生成AIが出力した文章を、自分の文章にどのように活かしているのかを追いかけることができるため、今まで見取ることができなかった、書く過程における子どもの思考の流れを見取れるという点が非常に画期的でした。


■子どもたちの反応はいかがでしたか?

 従来「書く」ことが苦手で苦痛に感じている児童が多いのですが、この授業では大半の児童が積極的に取り組み、アンケートでは80%以上の児童が「楽しかった」と回答していたのが印象的でした。

 また文章作成に苦手意識を持つ児童も、AIのサポートで最後まで自分の力で文章を書きあげることができ、自信を持ったように感じました。


■今後どのように生成AI を活用していきたいですか?

 学習アシスタントとしての機能が非常に高いと感じているので、例えば探究学習の際の調査をしたり、発表の構成を考えたりといった作業に使えるのではと思っています。授業以外でも、委員会の企画や計画のアイデア出しとしての活用も面白そうですね。




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葛飾区立東金町小学校について

東金町小学校は、ICTを活用した探究学習に力を入れ、高い成果を上げています。特に、23年度においては、約10 年ぶりに東京都の公立小学校としてパナソニック教育財団特別研究指定校に選定され、「日本型教育実践とICTを利活用したSTEAM型教育をベストミックスした令和の学びのスタンダード化の実現」というテーマで研究を行っています。

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※記載内容は、2024年11月時点の内容です

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