【セミナーレポート】多様な児童生徒の学びを支える、新しい形のAIドリル×ダッシュボード「tomoLinks」ご紹介セミナー
2025/10/24
2025年9月に “AIと教育データ”をテーマとするオンデマンドセミナーが開催されました。
AIドリルなどの学習支援ツールの活用が定着しない教育現場の課題をふまえ、子どもたち一人ひとりが主体的に・自己調整しながら学び続ける力をどう育むかという視点から、「tomoLinks(トモリンクス)」のAIドリル機能、ダッシュボード機能をご紹介。
また、学習者主体の学びをどう実現するかについて、有識者による知見の共有に加え、自治体担当者による具体的な事例をご紹介しました。
■セミナー開催
タイトル:
多様な児童生徒の学びを支える、新しい形のAIドリル×ダッシュボード「tomoLinks」ご紹介セミナー
~AIと教育データで切り拓く、個別最適な学びの新しいかたち~
配信期間:2025年8月26日(火)~9月30日(火)
配信形式:オンデマンド配信
視聴対象:全国の教育委員会および自治体職員、教職員の皆様
主催:コニカミノルタジャパン株式会社
登壇者:
・放送大学 准教授 小林 祐紀 氏
・箕面市教育委員会 子ども未来創造局 学校教育室 指導主事 高科 侑来 氏
・コニカミノルタジャパン株式会社 松末 育美
セミナーご案内ページ:https://bs-offers.konicaminolta.jp/l/466361/2025-07-28/p1jkv
【基調講演】デジタル学習基盤を活用した学習者主体の授業デザイン
放送大学 准教授 小林 祐紀 氏
冒頭で小林氏は、『「紙かデジタルか」「教師主導か学習者主体か」といった二項対立を乗り越え、デジタルの力でリアルな学びを支えるという立ち位置に立脚したい。形だけを追うことに満足せず、子どもにとって学びが成立しているかという視点で考えていく必要がある』と述べ、学習者主体の授業づくりが求められている背景として次の2点を挙げました。
| 1.人口減少と社会変化 2024年の出生数は約68.6万人と過去最少を記録し、想定を14年も上回るスピードで減少。 また、高校生の約10人に1人が通信制に在籍しており、「みんなと同じ方法・同じペースで学ぶ」ことに違和感を覚える子どもが増加しています。 小林氏は「こうした状況のなか、知識や技能に加え、未知の課題を解決し、自ら人生を切り拓く力を育むことが必要」だと言及しました。 2.国際調査から見える教育課題 ISA調査によると、日本の学力水準は高いものの、「自律学習」と「自己効力感」に関する項目は低水準です。小林氏は「教えてもらうことに慣れすぎていることが原因の一つ」と指摘しました。 |
続いて小林氏は「これからの授業づくりは、ただ学習者に委ねれば良いというわけではない」と説明。「“教師が導く授業”ももちろん重要だが、今後は情報活用能力を意識した学習者主体の授業を実現させていく必要がある。明確に区分されるのではなく、探究的な学びを意識しながら、多様なグラデーションで授業づくりを行っていくことが重要だ」と強調しました。
そのうえで、以下小学校での6年生社会科の授業の事例を紹介しました。
・那珂市立木崎小学校(リーディングDXスクール指定校)
児童は提示された複数の学習課題に対して、学ぶ順序や方法を自ら選択・決定。教科書・デジタル教材・Web検索など学びの多様性を認めることで、個別最適な学びを実現しました。授業中には自然に児童同士の声かけが生まれ、必要に応じて協働へと発展し、学びの流動性が担保されていました。そして終盤には自ら選んだ学び方について振り返る活動が行われました。
さらに、事例を紹介する中で「指導の個別化」を支える有効なツールとしてAIドリルに言及。児童が自らの取り組みを把握できることと、教員が教員用ダッシュボードでクラス全体や個々の状況を確認できる仕組みの重要性を示し、茨城大学教育学部附属小学校での取り組みを紹介しました。
・茨城大学教育学部附属小学校
tomoLinks のAI ドリル機能の、ドリルへの取り組み数に応じて宝石が貯まる仕組みや、児童同士で目標を共有できる仕組みを紹介。小林氏は「個別最適な学びが重要な一方で、協働的なの学びも同じくらい大切で、一体的に充実をさせることが求められている。学級全体の意欲を高めてみんなで前進することで、指導の個別化はより進行していく。」と述べました。
また、個別最適な学びの中で、教師だけでは見切れない部分を補完する「学習伴走型AI」の活用がすすんでいることを説明。同校で2カ月間日常的に学習伴走型AI を活用した子どもたちの意識調査結果を紹介しました。
最後に小林氏は、教師自身の授業観をアップデートすることの重要性について強調し、「子どもにとって良い授業とは何かを問い続けることが重要。教員こそが探究的な学び手であり、学ぶ姿を子どもたちにも見せていきたい。私自身はそのための支援をこれからも続けていきたい」とまとめました。
【事例紹介】
新しい形のAIドリル×ダッシュボード tomoLinks「先生×AIアシスト」~箕面市における教育データの利活用と実践事例~
箕面市教育委員会 子ども未来創造局 学校教育室 指導主事 高科 侑来 氏
はじめに高科氏は、コニカミノルタと共同で行ってきた実証事業での取り組みや、箕面市における情報教育の取り組みについて説明しました。
箕面市では平成30年度に市内の全小学校4~6年生に、令和2年度にはGIGAスクール構想により小学校1年生~中学校3年生の全児童生徒に1人1台のタブレット端末の配備が完了し、令和4年度にはタブレット端末の持ち帰りとtomoLinksの運用が開始しています。
tomoLinksの「こころの日記」「れんらくちょう」「とも学」を効果的に活用し、児童生徒の学習面・メンタル面双方の支援と教員の業務負担軽減を実現しています。これらの取り組みについて、事例を紹介しました。
続いて、高科氏は箕面市における教育データの活用について言及。実証事業で掲げたテーマの一つである「成績予測を活用した、指導の個別最適化」の取り組みについて具体的な事例を紹介しました。
tomoLinksを用いた教育データ活用
箕面市では小学校~中学校の9年間を通して、全市立小中学校の児童生徒を対象に市独自に“箕面子どもステップアップ調査”を実施。子ども一人ひとりの各学年における学力、体力、生活の状況を把握・分析しています。
高科氏は、箕面子どもステップアップ調査により、教員が児童生徒の学習理解度や生活状況の把握ができたことや、学級全体の学習面での振り返りに役立ち、復習や補充ができたことが成果だと説明。一方で、以下の課題がありました。
| ≪課題≫ ・経年的なデータはたまるが、過去学年のデータを分析・確認するには手間と時間がかかる ・クラス替えにより今年の担当クラスの生徒は、昨年度は複数のクラスに分かれているため、探すのが大変 ・児童生徒の各課題が今の課題なのか、経年的な課題なのかの把握が難しい |
これらの課題を解消し、個別最適化された学びの実現のための取り組みとして、箕面子どもステップアップ調査による児童生徒のデータをもとに、箕面市の子どもたちの傾向に合わせたデータ分析とAIモデルを作成し、ダッシュボード化することをすすめました。
箕面子どもステップアップ調査の成績データや環境データなどの経年データを、AIによって分析し、教員に対しては教員用ダッシュボードとして提示、子どもたちに対してはtomoLinksのドリル機能でおすすめ教材として提示する形で活用しました。
・教員用ダッシュボード
経年分析と成績予測が確認できるダッシュボード。学校・学年・クラス・児童生徒ごとにフィルタリングして結果を確認するなど、あらゆる観点での分析が可能です。ヒートマップでは、児童生徒が苦手としている部分と良く出来ている部分を経年比較することができます。
実際に活用した教師からは「学年があがるにつれて分析項目も多くなり、教師側の負担も多くなる中で、非常に意味のあるシステムだった」、「優秀な児童でも思わぬところで躓きをしている部分があり、振り返りが必要な課題があることに気づけた」、「理解が難しい児童の成績を把握して重点的な指導にあたることができた」などの声が聞かれました。
・子どもへのおすすめ教材
子ども向けのドリル画面では、AIが提案したおすすめ教材に取り組むことができる【ミッション】の他に、【先生から課題】や、児童生徒が自ら教材を選んで取り組むことができる【学習ライブラリ】など様々な切り口で学習に取り組むことができます。
【ミッション(AIが提案するおすすめ教材)】には、箕面子どもステップアップ調査の分析結果も反映されています。児童生徒一人ひとりの定着度に合わせて、教材を提示してくれます。
主に宿題や朝学習、授業中の課題として活用されており、活用方法は教育委員会から各学校へ活用の仕方を周知しながら取り組みをすすめています。
高科氏は「学習コンテンツも充実しており、複数メーカーの幅広い難易度・形式があります。児童生徒の理解度に合わせて課題を調整することもできるし、ドリルだけでなく動画教材もあり、多様な教材で子どもたちが楽しく学べるようになっています。」と説明しました。
最後に高科氏は「今後も引き続きデータ活用に取り組み、子どもたちの学力向上、教員の指導力向上を目指していきたいと思います。」と締めくくりました。
AIと教育データで個別最適な学びを支える「tomoLinks」のご紹介
コニカミノルタジャパン株式会社 松末 育美
はじめに、松末氏はコニカミノルタの教育事業への取り組みを紹介。tomoLinksの先生×AIアシスト(AIドリル+ダッシュボード)の3つの特徴を説明しました。
①複数の教材会社が提供する多種多様なドリル・教材を利用可能
・基礎固めのたのしく学べる教材から記述式問題まで幅広い難易度に対応
・手書き・選択式・記述式など馴染みのある紙ドリルに近い解答方式を選択可能
・eboard、京都教育大学の黒田先生が制作したものなど、約1万本の動画も活用できる
⇒多様な児童生徒の特性に合った教材で学習することができる
②一人ひとりに寄り添う学習伴走型AIにいつでも質問できる
・考え方を丁寧に伴走する生成AIが個別学習や無学年での学び直しをサポート
・一般的な生成AIと違い、すぐに正解を教えるのではなく、分からないところを深堀りしながら解説
・現在大阪市の一部の小学校で実証中
⇒一人ひとりに寄り添った解説や対話で分からないところがそのままにならない
③学力調査データを反映し、AIの教材提案と先生の指導が連携して学びを支援
・全国学力・学習状況調査や各自治体の学力調査の結果、日々のドリルの正答率などを分析し、AIモデルを構築
・過去の先輩のデータに基づいて一人ひとりに最適な取り組むべき単元・小単元をピックアップしてドリルを配信
・教員はダッシュボードから児童生徒の学習状況を把握し、より効率的な個別指導が可能に
⇒データに基づいて選ばれた教材で一人ひとりが確実に力をつけることができる
続いて松末氏は、「tomoLinksはドリルを管理する画面の提供だけではなく、実際に自治体で活用いただけるように継続的なアフターフォローを提供しています。」と述べ、教育委員会に月次で客観的な詳細な分析レポートを提供していることに言及。また、教育委員会や学校からの「より複合的にデータが見たい」、「他のシステムとも統合してデータを見たい」との要望を受けて開始した新たな取り組みについて説明しました。
松末氏は「tomoLinksは第2期GIGAスクール構想の重点課題である“教育データ利活用”を推進するために、総合的な学習ダッシュボードを新たに開発しました。」と述べ、現状のダッシュボードに対する課題と新しいダッシュボードの特徴を以下の通り紹介しました。
| ≪課題≫ ・異なるシステム間でデータが分散している ・教員がデータ分析に不慣れな場合、活用のハードルが高い ・児童生徒自身が振り返るためのデータが限定的 ≪新しいダッシュボードの特徴≫ ・AIがデータ分析をサポートしてくれる ・単体の機能の状況だけではなく、学習eポータル、校務支援システムなど複数のシステムのデータを統合的に分析し、より深い洞察を提供する |
さらに、松末氏は新しいダッシュボードについて「教員が児童生徒の見取りに専念し、自然とデータ活用が習慣化される環境を提供します。また、教育委員会は学校全体の教育改善に集中できます。」と説明。「これまでのレポートやグラフだけが並んだWeb画面とは異なり、リアルタイムで複合的なデータをAIのサポートを受けながら分析できることが新しい教育データ活用の形だと思っています。」と強調しました。
最後に松末氏は「教育データを活用した総合的なダッシュボードは、これまでの個別活用から統合的なデータ活用へと進化し、日々の管理負担を軽減しながら、データに基づいた教育改善を実現していきます。ぜひ教育データを活用した次のGIGAスクール構想の形を一緒につくっていきませんか。」と締めくくりました。
■まとめ・実践事例のご紹介
本セミナーを通じて、教育現場でのAIドリルの活用や教育データの活かし方について、実践的な理解を深めることができました。参加者からは、具体的なイメージが明確になったとの声も寄せられ、教育データの活用可能性を改めて実感いただく機会となりました。
本セミナーでご紹介しましたtomoLinksの先生×AIアシスト(AIドリル・ダッシュボード機能)の導入事例をご紹介しております。先生×AIアシストによって子どもたちが主体的に学べる環境づくりや、個別最適な学びを実現した実践的な事例となっておりますので、ぜひご覧ください。