【セミナーレポート】~AI時代の学校教育を考える~「都立AIに学ぶ挑戦と可能性」
2025/12/22
コニカミノルタは今年度、東京都の都立学校向け生成AIサービス(都立AI)の構築等の業務委託を受託いたしました。
本レポートでは、文部科学省・東京都教育庁のご担当者様をお招きして開催したオンデマンドセミナー「AI時代の学校教育を考える 都立AIに学ぶ挑戦と可能性」の内容を、学校現場における生成AI活用の視点からご紹介します。
初めに、東京都教育庁のご担当者様から、都立学校向け生成AIサービス「都立AI」の導入までの経緯や学校現場での活用事例、今後の方針についてご紹介いただきました。
また、文部科学省のご担当者様には、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」が示す方向性や来年度に向けた概算要求に加え、全国の生成AIパイロット校での最新実践事例をご紹介いただきました。
コニカミノルタからは、学校教育向けソリューション「tomoLinks(トモリンクス)」を通じた生成AI活用の取り組みや最新事例をお伝えしました。
※文部科学省 伊勢本様の講演についてはレポートの公開はございません
セミナー概要
タイトル:AI時代の学校教育を考える 都立AIに学ぶ挑戦と可能性
配信期間:2025年10月27日(月)~11月30日(日)
配信形式:オンデマンド配信
視聴対象:全国の教育委員会および自治体職員、教職員の皆様
主催:一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)
共催:日本教育工学協会(JAET)
協賛:コニカミノルタジャパン株式会社
後援:文部科学省、総務省、経済産業省、デジタル庁
登壇者:
・東京都教育庁 総務部デジタル推進課 統括指導主事 中村 伸也 氏
・文部科学省 初等中等教育局 学校情報基盤・教材課 伊勢本 惇示 氏
・コニカミノルタジャパン株式会社 松末 育美
セミナーご案内ページ:https://bs-offers.konicaminolta.jp/l/466361/2025-10-10/p3hyl
主催者挨拶
冒頭では、主催者である一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC) 会長 山西潤一氏より開会の挨拶がありました。
山西氏は、AIの教育利用が求められる現状に触れながら、「教育DXの推進は、これまでの教育の学び方や在り方といった方法論が、パラダイムシフトによって大きく変わっていく。デジタル化時代を生きる子供たちにふさわしい教育を考えていくことが求められている」と述べました。
今回のセミナー「都立AIに学ぶ挑戦と可能性」が、AI活用の今後を考える上で価値ある内容になることへの期待が示されました。
【基調講演】
都立学校における生成AIサービス(通称:都立AI)の導入及び活用方法について
東京都教育庁 総務部デジタル推進課 統括指導主事 中村 伸也 氏
■東京都教育委員会の生成AI活用に対する取り組み
東京都教育委員会では、令和5年9月から教育現場における生成AIの研究を開始しました。2年間の研究成果を踏まえ、令和7年5月より全都立学校で「都立AI」と呼ばれる生成AIサービスの利用が開始されています。
研究の推進にあたっては、文部科学省の「生成AIガイドライン」が示す「人間中心の利活用」や「情報活用能力の育成」を重視。研究校での実証のもと、ガイドラインや授業用教材等が整備され、その結果、全都立学校256校・約16万人へと展開されました。

■都立AIの特徴と生成AI研究校での成果
都立AIは、チャット形式で対話しながら、学習・校務で活用できる仕組みを備えています。
中村氏は、都立AIの特徴として以下の3点を挙げ、加えて、「レベル別のオンライン研修会を実施しており、どの教員も安心して活用できるようにしている」と説明しました。
| 〈特徴〉 ・プロンプトテンプレートの共有機能 ・安心・安全な環境設定 ・迅速なアップデート |

また、生成AI研究校における成果の一例として、次のような事例が紹介されました。
・対面指導の充実:
生徒が受験志願理由書の作成に生成AIを活用。教員の添削時間を大きく削減され、その結果、1人の教員の約60時間の添削時間を対面指導の充実に充てることができました。
・作品制作の補助:
動画制作課題において生成AIを活用。生徒が生成AIとの対話を通して作品の質を向上させることができ、約80%以上の生徒が成果を実感していました。
・個に応じた指導の充実:
肢体不自由の特別支援学校に通う生徒の創作活動で生成AIを活用。画像生成AIで自分の思いを絵に表し、劇の背景として投影することができました。
中村氏は、「このように様々な場面で生成AIを活用できることが分かり、教員は手応えを感じていました」と説明しました。
これらの都立AIの取組みは「都庁DXアワード2025」において知事賞を受賞しています。

■都立学校生成AI利活用ガイドラインとAIリテラシーの育成
続いて、東京都教育委員会が策定した「都立学校生成AI利活用ガイドライン」について紹介がありました。ガイドラインでは、生成AIを活用する目的や活用の指針、好ましい使い方と避けるべき使い方などが整理されており、一部の内容について具体的に説明されました。

また、東京都教育委員会ならではの特徴的な取り組みとして、AIリテラシーを育成するための「AI初回授業」が紹介されました。初回授業で使用している教材などを提示しながら、AIリテラシーの育成のための具体的な取り組みについて説明されました。
・都立学校向け生成AI研修プログラムの実施:
機能の説明会を行った後、 AI入門研修と上級者研修を定期的に実施。
・生成AIリテラシー育成動画教材の公開:
著名人を起用しながら導入編、基本編、注意編、活用編の動画教材を作成して公開する予定。
・情報教育ポータルサイトの公開:
これまでに紹介した教材等の資料に加え、研究校の実践事例等を掲載。生成AIについては40件の事例が掲載されており、各教科の授業の中でどのような場面で生成AIを活用しているかについて詳細に紹介。


■都立AIを活用した授業事例
まず、都立AIの主な機能として、以下の2つが説明されました。
・機能①:AIひろば(教員用画面)
都立学校教員が作成したオリジナルプロンプトを共有する機能。9月時点で 1300件以上のプロンプトテンプレートが登録されており、教科の学習に役立つものから、日常業務を支援するものまで内容は多岐にわたっています。

・機能②:都立AIナビ
AIと相談してプロンプトを自動生成する機能。「相談モード」でやりたいことを具体的に伝えるとプロンプトが作成され「実行モード」で動作を確認できます。
中村氏は「AIメニューを多くの教員が作成できるようになったのもこの機能が一役買っている」と説明しました。

続いて、都立AIを活用した授業での具体的な実践事例が紹介されました。
〈実践事例〉
・コーディングに活用
情報化のプログラムの生成場面で都立AIを活用。生成AIを活用することで難しいプログラム言語を習得していなくても、正しく動作するアルゴリズムの考案に集中できるところに利点を感じています。生徒たちが自然とプログラム言語に親しみ覚えていく姿が見られました。また、思うように 挙動しない場合は自然発生的に相談し合う姿が見られる点も良い点だと感じています。
・情報格差に対する考察
特別支援学校での情報格差に対して考察する授業で活用。1対1など少人数の授業では決め細かい配慮ができる一方で、他の生徒の意見を聞く機会が少なく意見が広がりにくい課題がありました。都立AIをディスカッションの相手とすることで思考の広がりを促すことができました。ある生徒は「都立AI」を自主的に使いこなし、スポーツ大会に出場する際に自分のメンタルを整える方法なども相談していました。
・ポスターの分析
高校1年生情報科の「情報デザイン」という単元で活用。自分が伝えたい意図が相手にポスターを通して伝えられているか情報デザインの視点から検討しました。 この事例については、授業の様子を撮影した動画を用いて、「都立AI」の活用や生徒同士の対話を通して生徒がどのように学びを深めていったのかを具体的に解説しました。

さらに、中村氏は「最も効果が高いのは、生徒が自ら探究的な学びに取り組んでいる場面である」と述べ、新聞でも取り上げられた、探究的な学びでの事例を紹介しました。
中村氏は「夢中で課題に取り組む中で、教員の想定を超える成果を出す生徒も多く、教師冥利に尽きる」と語る教員がいることを紹介し、「全員が一気にこのレベルに到達するわけではないため、授業の中で計画的に一歩ずつ進めていく視点も必要である」と強調しました。

■今後の方向性
最後に中村氏は今後の方向性について、「授業実践の中で効果的な場面を見つけ、その実践を積み重ねていきたいと考えている」と述べました。また、「東京都教育委員会として生成AIリテラシー教材を準備し、環境を整えること。すべての教員と生徒に利用してもらえるよう工夫すること。そして、何のために生成AIを活用するのかという本質論を見据えた授業改善を推進していきたい。」と締めくくりました。

【事例紹介】 生成AI活用事例のご紹介
コニカミノルタジャパン株式会社 松末 育美
■ コニカミノルタの教育分野における取り組みとtomoLinks概要
冒頭では、コニカミノルタが2019年度の文部科学省の実証研究事業をきっかけに、教育現場における先端技術の活用研究を進めてきた経緯を紹介されました。現在は、AIと教育データの活用を軸にした学校教育ソリューション「tomoLinks」を展開しており、2025年には東京都立学校全256校・約16万人の児童生徒が利用する「都立AI」の構築・保守・運用業務を担い、安全・安心な生成AI活用環境の整備を推進しています。

tomoLinksは「学びはいろいろ、でも大丈夫。AIと教育データがしっかりサポート」をコンセプトに、教育現場の課題を解決するオールインワンのソリューションです。
・生成AI活用
・AIドリル
・学習eポータル・ダッシュボード
・学習支援
の4つの機能で構成されており、本セミナーのテーマである「生成AI活用」について詳細な説明が行われました。

■教育現場における生成AI活用の現状と課題
AIの教育活用について、2025年10月公表のOECDによる国際調査データが紹介されました。「過去1年で授業においてAIを使用したか」という問いに対し、日本の「はい」と回答した割合は、小学校16%、中学校17.4%で、55の国・地域中54位と非常に低い状況であることが示されました。
あわせて、現場の教員からの声として、次のような課題が挙げられました。
・プロンプト作成が難しい
・情報漏えいなどのリスクが不安
・忙しく新しいツールに時間を割けない など
松末氏はAIによる悪影響への懸念が多いことに触れ、「先生が安心して有効活用できる環境づくりが重要である」と指摘しました。これらを解決するには、「簡単に使え、目的が達成できるツール」と「導入後の活用を支える仕組み」が必要であり、tomoLinksの生成AI機能は、こした課題解決を実現すると説明しました。

■チャッともシンクの機能についてと実践事例
文部科学省のガイドラインに準拠した安全・安心な生成AI機能で、年齢制限がなく、教員と児童生徒双方に向けて提供されています。
導入トライアル校は約140校へと広がっています。
● 教員向け
校務の効率化を支援する生成AI機能で、授業準備、保護者向け文書作成、翻訳など、業務別のテンプレートを備えています。
● 児童生徒向け
授業ごとにカスタマイズできる生成AI機能で、教員が事前にAIの“ふるまい”を設定することで、授業のめあてに合わせて、児童生徒の発想を広げたり思考を深めることができます。
1つの授業内で、レベルや役割の異なる複数のAIを設定することも可能です。

〈活用事例①:大阪市(2024年度実証)/小学校2年生「6の段」〉
授業の振り返りの場面において、以下の2種類のAIを設定し、児童は自分の理解度に合わせてAIを選択し活用しました。
・基本レベル:6の段のランダム出題AI
・応用レベル:児童が作った問題にAIが答えるAI
担当教員からは、「子どもが出題した問題をAIが答えることで友達に聞くより恥ずかしがらずに確認できた」、「1人1人のペースで安心して学習をすすめることができた」などの効果が聞かれました。

〈活用事例②:大阪市(2024年度実証)/中学校3年生「関係代名詞の英作文」〉
3つの英文に共通する答えを導くAIと、英文作成をサポートするAIの2種類を組み合わせて活用しました。生徒はAIに正解(例:スカイツリー)を導き出してもらうため、英文を何度も書き直すなど試行錯誤を重ね、主体的で深い学びにつながりました。
教員からは「全員が自分のペースで学ぶことができ、思考が止まる時間が少なくなっていた。」、「生徒の再構築しようとしている姿が印象的で、このような主体的で対話的な深い学びが達成し可能にしたのは生成AIである」との声が聞かれました。

■学習伴走型AIの機能についてと実践事例
学習伴走側AIは、分からない内容をいつでも質問でき、答えではなく“考え方”を丁寧に伴走する、児童生徒向けのAI機能。個別学習や無学年学習を支援します。
京都教育大学の黒田先生に監修いただいており、以下の4つの特徴を説明しました。
・ドリル・学力調査などの教育データと対話内容から最適化された応答
・14か国語対応で学国籍の児童生徒のサポートにも活用可能
・対話の内容に応じて関連するドリルを出題
・安心・安全設計で児童生徒の利用も安心

〈活用事例:茨城大学教育学部附属小学校〉
次のような課題に対してtomoLinksが活用されました。
| 【課題】 ・児童生徒一人ひとりに習熟度に合わせて教材を用意することは負担が大きく実現が困難 ・教員主導ではなく、子どもが自分で学びを進められる環境を整備したい 【tomoLinksを活用した3つの取り組み】 ・AIが全学年の内容も含めて児童一人ひとりに適した教材を提案 ・考え方を丁寧に伴走する学習伴走型AIの活用 ・教材に取り組むことで宝石を獲得できるゲーム要素を導入 |
特に、学習伴走型AIを活用した結果、90%の児童が「学習が楽しくなった」と回答。教員からも「負担が減り、子供と関わる時間が増えた」「主体的な学びが進んだ」との声が寄せられました。

■ 次世代機能「AIダッシュボード」の方向性
松末氏は第2期GIGAスクール構想では教育データの利活用が重点課題となっている現状を踏まえ、以下のような課題があると指摘しました。
・異なるシステム間でのデータ連携が不十分
・データの読み取りや教職員のリテラシー向上が必要
・児童生徒自身が振り返るためのデータが限定的
これらの課題に対し、コニカミノルタでは教育データを活用した総合的な学習ダッシュボードの開発をすすめており、次世代機能「AIダッシュボード」の概要について説明しました。
最後に、松末氏は、tomoLinksのホームページにて生成AI活用の実践事例として、具体的な授業の内容やプロンプトの設定などを掲載していることを紹介し、「これからも、チャッともシンク、学習伴走型AI、 AIダッシュボードにより教育現場をサポートしてまいります。」と締めくくりました。

まとめ|学校における生成AI活用のポイントと実践事例のご紹介
本セミナーでは、東京都教育委員会様による都立AI導入の背景や活用状況、今後の方向性のご紹介に加え、文部科学省によるガイドラインの示す方向性やの全国の先進事例について幅広くご紹介いただきました。
学校現場における生成AIの利活用は、ガイドラインの整備や各地の取り組みを通じて、着実に具体化が進んでいます。登壇者の皆さまによって示された事例や知見は、今後の学校における生成AI活用を検討するうえで、非常に参考となる内容でした。
コニカミノルタとしても、教育現場の皆さまが安心してAIを活用できるよう、引き続き支援を進めてまいります。
本セミナーでもご紹介しました、学校現場での生成AI活用事例を以下のページで紹介しています。授業の内容・進め方・活用のヒントを具体的にまとめていますので、ぜひご参考ください。
関連リンク|生成AI活用事例・製品の参考情報
▼チャットもシンク 実践アイデア
https://tomolinks.konicaminolta.jp/casestudy/
▼tomoLinks 生成AI活用支援機能
https://tomolinks.konicaminolta.jp/service-001/