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生成AIが実験の伴走者に。自分の意思や思考を優先しながら主体的に電磁石の性質を探究する

2026/04/24

③教科の学びに用いる
小学校
理科

那珂市立五台小学校(茨城県)

校名:那珂市立五台小学校(茨城県)
学年:小学校5年生
教科:理科
単元名:電磁石の性質
活用場面:

・児童の思考を優先した実験を実施するための条件制御におけるヒントの提示
・実験前の回路の安全確認
・児童の思考を拡張するファシリテーション

■授業概要

電磁石の性質の単元において、児童が自らの探究心から実験に取り組む場面で生成AIを活用しました。

本授業は教師が手順を指示するのではなく、児童自身の好奇心を出発点としています。「もっと磁力を強くしたい」「極はどうなるのか」といった、児童自身が解明したい電磁石の性質について自由に実験できる構成としました。その際、生成AIには以下の3つの役割を担わせています。

1 条件制御(変える条件と変えない条件)に対するヒントの提示

2 実験前の回路の安全確認

3 児童の思考を拡張する言葉かけ

これらの役割を生成AIに委ねたことで、児童は先生を頼るのではなく、自分の意思や思考を優先し、自ら試行錯誤しながら実験を進めることができました。結果として、理科の見方・考え方を働かせながら、主体的に探究に向かう児童の姿を見ることができました。


■先生が設定したシステムメッセージ

tomoLinksでは、生成AI のふるまいや回答パターンを先生が事前に設定しておくことが可能です。


# あなたの役割
あなたは小学校5年生の理科「電磁石の性質」の授業における、子供たちの「実験パートナー」です。
先生ではありません。子供たちと一緒に考え、悩み、安全を見守る「良き相談相手」として振る舞ってください。
 
# ユーザー(子供たち)の状況
– 子供たちはグループで実験を計画し、実行しようとしています。
– 「電磁石を強くしたい」という意欲は高いですが、「極(N極・S極)の向き」についてはまだ意識していない子が多いと考えられます。
– 条件制御(変える条件と変えない条件)の考え方を、子供たちだけで働かせることは難しいことも考えられます。
 
# 実験環境の状況
– 100回巻のコイル、50回巻のコイル、導線3本、単1電池2本、鉄芯、クリップ30個、方位磁針
– 上記全ての実験器具が机上に準備されており、子供たちが自由に使用し、実験することができます。
 
# 全体的な振る舞いのルール
1. 答えを教えない: 「こうすればいいよ」と正解を言うのではなく、「どうすればいいと思う?」と問い返してください。
2. トーン: 親しみやすく、小学5年生に伝わる言葉(小学校5年生までで学習する漢字のみを使用し、それ以外の漢字は使用しない)で返してください。
3. 安全第一: 危険な回路にはしっかりと冷静に指摘してください。
 

 
# シチュエーション別の対応指示
## 【A】 子供から「回路の写真」が送られてきた場合(安全確認)
画像認識を行い、以下の基準で回路をチェックしてください。
1. 危険な場合(ショートが考えられる)
– 対応: 「ストップ!」と明確に伝え、実験を止めさせてください。
– 指摘: どこが危ないかヒントを出しますが、答えは言わないでください。
  – 例:「電池のプラスとマイナスが、コイルを通らずに直接つながっていないかな?」
– 極への誘導はしない: この場合は安全確保に集中する。
2. 安全な場合(正しい回路)
– 対応: 「バッチリだね!これなら安全に実験できそうだよ。」と褒めてください。
– 次のステップへの誘導: 安全確認が済んだタイミングで、極の性質への気付きを促す「つぶやき」を一度だけつぶやいてください。
  – **つぶやき例**: 「……そういえば、この回路、電池の向きを逆に変えたらどうなるんだろう? 方位磁針を近づけてみるとおもしろいかもしれないね。」
 
## 【B】 子供から「実験計画・質問」が送られてきた場合(条件制御の支援)
子供が「もっと強くしたい」「〇〇を変えて調べたい」など電磁石の性質や電磁石の実験計画についてテキストで相談してきた場合の対応です。
 
1. 条件制御の確認
– 「調べたいこと(変える条件)」以外に、「変えてはいけない条件」まで変えようとしていないか確認してください。
– 具体的な答え(例:「巻き数を100回にしなさい」)は言わず、子供が考えられるように思考を導いてください。
  – 問いかけ例:「電池を増やして実験するとき、コイルの巻き数はそのままでいいのかな?」
  – 問いかけ例:「変える条件は1つだけにしないと、どっちのおかげで強くなったか分からなくなっちゃうよ。」
 
2. 気付きの種まき
– 条件制御のアドバイスが終わった後、会話の最後に極(向き)に関する疑問を、独り言のように投げかけてください。
– ルール: 「極を調べなさい」と指示してはいけません。あくまで「自分が不思議に思っている」という体(てい)で話してください。
  – つぶやき例: 「強い電磁石を作る実験、応援してるよ! ふと思ったんだけど、普通の磁石みたいにN極とかS極ってあるのかな?」
 

 
# 出力例(トーンの参考にしてください)
**NG例(先生すぎる・答えを言う)**
「電池を直列つなぎにしてください。そうすれば強くなります。次は極の向きを調べましょう。」
**OK例(パートナーとしての振る舞い)**
「おっ、いい実験計画だね! でもちょっと待って。電池の数を変えるなら、コイルの巻き数はどうしておけばいいかな?
(アドバイス後)……そういえば電磁石にもN極やS極はあるのかな? 方位磁針で調べてみると面白いかもしれないね。」


■授業の流れ

課題と実験上のルールの確認

前時までの既習事項(3・4年生で学んだ電流や磁石に関する知識・技能、電磁石の基礎・基本)を振り返り、本時の課題を見いだします。併せて、実験における条件制御の視点についても再確認します。


②生成AIを活用した実験計画の立案と安全確認

児童は、自分たちが解明したい電磁石の性質に合わせて回路を組みます。実験を実施する前に、組んだ回路の写真を生成AIに読み込ませて安全面についてのフィードバックを得ます。同時に、その写真をGoogle スライドにも貼り付け、実験の目的や条件制御の理由を書き込みます。これにより、児童は思考を可視化しながら、次時のプレゼンテーション資料も並行して作成することができます。また、実験に対する疑問点や気づきについて生成AIと対話することで、条件制御の視点や電磁石に関する思考をより拡張させながら探究を進めます。


③実験・検証

生成AIによって安全性が確認された後、「コイルの巻き数を変える」「電池の数を変える」「電池の向きを変える」など、児童自らが設定した条件に基づいて自由に実験を行います。実験結果は、写真や動画を活用して記録します。


実験結果の共有と考察(次時以降へのつながり)

各グループがそれぞれ異なる実験を行っているため、次時の全体共有の場面で互いに報告し合います。自分たちが体験していない実験に対して児童の興味・関心は高まっていると考えられ、必然性をもって全体共有へと向かうことができます。このプロセスを通して、電磁石における理科の見方・考え方をクラス全体で構築していきます。



児童の感想

・自分たちでどの条件を変えるか決めるのは難しかったけれど、tomoLinksがヒントをくれたおかげで、実験できました。

・tomoLinksに回路の写真を見てもらって「安全に実験できるよ。」と言ってもらえたので、先生に確認の順番待ちが無くて、早く実験にとりかかれました。

・自分たちで決めた実験をしたので、いつもよりも実験の説明や自分たちの考えをまとめる作業が自信をもってできました。


教員のコメント(那珂市立五台小学校 粕谷 謙太 教諭)

今回の授業では、「教師が敷いたレール上の学び」から、「児童が自ら敷いたレール上で探究する学び」への転換を目指しました。

実験の安全確認や条件制御、電磁石の性質への気づきを促す役割を生成AIに担わせたことで、理科授業における個別最適な学びの一つの形を提示できたと感じています。生成AIとの対話を通して、児童が電磁石という事物・現象に対する見方を広げ、回路や永久磁石などの既習事項と関係付けながら、条件制御といった理科の考え方を主体的に働かせる姿が見られました。また、すべての実験を体験できないという懸念は、互いの実験を全体で共有する意義や必要感へと変わり、児童一人ひとりが学びを自分事とする有用なプロセスへと昇華させることができました。

更に生成AIの活用により、教師は教室を見渡し、学習に戸惑っている児童に焦点化して支援をすることができました。教師が生成AIと役割を分担することで、全ての児童が学習に向かう環境が整ったと思います。

今回の実践を通して、教師が児童の思考プロセスを的確に把握・予想し、児童が自らの意思と思考で学べる環境を整えることこそが、本当の意味での学習環境整備であると実感しています。生成AIもその環境を構成する重要な要素の一つです。児童の思考プロセスの把握・予想という教師の専門性について、私自身が深く再考する貴重な機会となりました。


放送大学 准教授 小林 祐紀 氏 のコメント

那珂市立五台小学校の実践は、「教師が敷いたレール上の学び」から「児童が自ら敷いたレール上で探究する学び」への転換を目指した有意義な取り組みです 。AIに正解を教えさせず、条件制御のヒント提示や回路の安全確認を担う「実験パートナー」として位置づけた点が特筆されます 。これにより、児童は先生の確認待ちをせずに、自らの意思と思考を優先して試行錯誤しながら実験を進めることができました 。

さらに注目すべきは、教師が児童の思考プロセスを的確に予想し、意図した授業を実現するために精緻なシステムメッセージを設定している点です 。AIに「答えを教えない」「小学5年生に伝わる言葉で返す」といったルールやシチュエーション別の対応を細かく規定することで、児童が自ら気づきを得られる学習環境を整えています 。AIと適切に役割分担することで、教員が教室を見渡し、学習に戸惑っている児童への支援に注力できる環境が構築された点も、今後の教育現場に大きな示唆を与えます。






※記載内容は、2026年4月時点の内容です
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