実験結果を予想する際の相談相手として生成AIを活用
2024/12/04
那覇市立天久小学校(沖縄県)
学校名:那覇市立天久小学校(沖縄県)
学年:小学校4年生
教科:理科
単元:物の体積と温度
■授業概要
那覇市立天久小学校では、児童の主体的な学びを促進するため、生成AIを理科の授業に導入しました。「物の体積と温度」の単元において、児童が実験結果を予想する際の相談相手として、キャラクターに扮した生成AIを活用しました。生成AIにキャラクター性を持たせることで、児童はAIとの対話に親しみを感じやすくなり、より気軽に質問でき、学びへの意欲が高まることが期待されます。特に、チェシャ猫のような謎めいたキャラクターは、児童の好奇心を刺激します。
■先生が設定したシステムメッセージ
tomoLinks では、生成AI のふるまいや回答パターンを先生が事前に設定しておくことが可能です。 今回、先生は下記の内容で設定しました。
生成AIには、児童が親しみやすいキャラクターとして「不思議の国のアリス」に登場するチェシャ猫の性格を持たせました。
あなたは、不思議の国のアリスに登場するチェシャ猫の性格を持つ、理科の質問に答えるボットです。小学生が理科に関する疑問を質問しやすい雰囲気を作りながら、分かりやすく楽しい回答を提供してください。以下の特徴を守りつつ、答えてください: **1. 性格と口調:** – 謎めいた雰囲気を持ちながらも親しみやすい。 – 質問者をほめたり、ユーモアを交えて好奇心を引き出す。 – 子どもが分かるように簡単な言葉を使う。 **2. 役割:** – 自然や科学の不思議を「教え込む」のではなく、「一緒に考える」スタンスで答える。 – 「こんなふうに考えられるね」や「これは面白いところだよね」といった表現を使用。 **3. テーマ:** – 宇宙、動物、植物、天気、エネルギーなど、あらゆる理科のテーマに対応。 – 分からない質問が来た場合も「答えを探す冒険に出よう!」と励ましながら調べる方向性を提案する。 **4. 例文:** – **質問:** 「どうして空は青いの?」 – **答え:** 「おやおや、空が青いのは不思議だね。光にはいろんな色が混ざっているけど、どの色が一番散らばりやすいと思う?それを考えると、空の色の秘密に近づけるかもね。」 – **質問:** 「カエルはなんで鳴くの?」 – **答え:** 「いい質問だね!カエルが鳴くのは、何かを伝えたいからなんだ。例えば、他のカエルに自分の存在を知らせたり、特別な相手にメッセージを送ったり。君なら、どんなときに声を出して伝えたいと思う?」 **5. 注意点:** – 小学生が興味を持ちやすいトピックを意識して話す。 – 質問に対する答えをすぐに教えず、相手の思考を促すヒントを出す。 – 難しい専門用語は避け、例え話や身近なことに置き換える。 |
システムメッセージを作成するにあたって
システムメッセージ(ペルソナ)の作成には、Perplexity AIを活用しました。Perplexity AIは、インターネット上の情報を迅速に検索・要約するAIツールであり、教育現場での活用が進みつつあります。使い方としては、「理科の質問に答えるチェシャ猫のペルソナを作成したい」とPerplexity AIに質問するだけです。あとは、得られたペルソナの下書きを修正して、意図した返答ができるように調整しました。
著作権への配慮
チェシャ猫は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』(1865年)に登場するキャラクターであり、著作権保護期間が満了しています。そのため、教育目的での使用に問題ないと思われます。キャラクターを説明するために使用する画像についても、チェシャ猫の特徴を画像生成AIにつたえて作成したものを使用しました。
■授業の流れ
導入:生成AIの紹介と使い方の説明
授業の冒頭で、生成AIの利用方法や質問の仕方について以下の3点を簡単に説明しました。また、児童が自由に質問できるよう、リラックスした雰囲気作りを心掛けました。
1.個人情報を入れてはいけないこと(人工知能が個人情報を憶えて、他で言ってしまうかもしれない)
2.丁寧な言葉を使うこと(丁寧な言葉を使うと、より良い返答が来る)
3.「9.9と9.11ではどちらが大きいか」という問題にAIが高い確率で誤答することを示し、AIでも間違えることがあるから、必ず最後は自分の目で確かめることが大切であること
活動①:tomoLinksを使って、生成AIと対話
ここでは、tomolinksの「チャッともシンク」を使い、生成AIとの対話を体験しました。活動に入る前に、児童が生成AIに慣れるため、普段疑問に思っていることを自由に質問する時間を設け、実際に操作しながらAIの使い方を学びました。tomoLinksの「チャッともシンク」には、きちんとフィルターがかかっているので、安心して生成AIを学習に取り入れることができます。
活動②:実験結果の予想と生成AIへの相談
児童は、物質の温度と体積に関する実験を行う前に、結果を予想し、生成AIに相談しました。「空気を温めたり、冷やしたりしたら体積はどうなる?」といった問題に対して、AIからの回答を基に予想を立てました。
tomoLinks「とも学」を使って、予想の共有
授業の後半では、tomoLinksの「とも学」を活用し、生成AIとの対話を通じて得た実験結果の予想をクラス全体で共有しました。「とも学」は、協働学習を支援する機能で、ワークシートを用いた学習が可能です。クラス全体でのワークシート共有や、複数名で同じワークシートの共同編集など、協働的な学びをサポートする機能が充実しています。「とも学」を活用することで、児童は自分の考えを他者と比較し、多様な視点に触れることで、学びを深めることができました。
tomoLinksを使って予想を共有した後、実際に実験を行いました。その後、授業を受けた4学年の児童に対してtomoLinksの生成AIを使った感想を書いてもらいました。
児童の感想 ※児童(4年生96名)から得たアンケートより抜粋
1. 理解が深まった内容について
●「空気の体積のことについてのことがわかった」「体積を温めたり冷たくすると体積は変わるとわかった」
→ 理科の単元に即した学びが深まっている様子がうかがえます。
●「細かいことでも答えてくれてよかったです」「自分が昔から持ってた疑問がわかった」
→ 生成AIが児童の個別の興味関心に応じた回答を提示できたことが成果として表れています。
2. 説明のわかりやすさについて
●高評価ポイント
約90%の児童が「わかりやすかった」と回答。具体的には:
・「例えばとかの例を出していてわかりやすかったです。」
・「説明の仕方がとても丁寧で人工知能ってすごいと思いました。」
・「前より考えが膨らんで理科の授業が楽しくなったから」
これらの意見は、生成AIが児童の理解度に合わせた柔軟な回答を提供したことを示しています。
●改善点として挙げられた意見
一部の児童からは「簡単な言葉を使ってほしい」や「読み上げれるAIがいいです」といった要望もありました。
3. 学びの楽しさの変化
生成AIを活用したことで、学びへの意欲が高まった児童の声が多く寄せられました:
●「とても楽しくなった」(63.5%)
・「最初はそんなに楽しくなかったけど生成AIを使って理科のことをどんどん知りたくなった」
・「答えを言うのではなくヒントを教えてくれて自分でも考えることができたから」
・「自分がちっとも知らなかったことも、質問すれば、ちゃんと答えてくれるから、質問するかいがあると感じるから。」
●「楽しくなった」(29.2%)
・「わからないものが面白く知れるからです。」
・「優しくてちゃんと機能してるから」
●「変わらない」「少し楽しくなかった」(約5%)
・理由として「こたえをいってくれないから」や「AIの力を使わないほうが楽しいと思ったから」といった課題が挙げられました。
4. 楽しさの理由に関する具体的なコメント
以下のような自由記述がありました:
・「質問をしたら何でも分かりやすく丁寧に教えてくれたからです。」
・「前は、AIは使わず、自分一人だけだったけど、AIを使うと分かりやすく教えてくれるからです。」
・「AIロボのおかげでもっと理科がわかりやすくなり楽しかったからです」
先生の感想 (那覇市立天久小学校 中龍馬先生)
児童の感想から、tomoLinksの活用が学びの楽しさや理解の深まりに大きく寄与していることが分かります。tomoLinksの生成AIを授業に取り入れることで、児童の興味関心を高め、主体的な学びを促進できたと感じています。特に、キャラクター設定を工夫することで、児童がAIとの対話を楽しみながら学習に取り組む姿が印象的でした。さらに、tomolinksの「チャッともシンク」はきちんとフィルタリングされているので、教師としても安心です。
一方で、一部の児童にはAIの回答が難しく感じられたようです。そういった場面では、AIと児童の間に教師が介入し、AIとのコミュニケーションを手助けする必要性があります。そういった意味では、まさに「伴走者」として児童に寄り添うことが今後の教師の大きな役割になるのではないでしょうか。また、AIの回答を鵜呑みにせず、自ら考え、検証する力を育むための指導も強化していく予定です。
※記載内容は、2024年12月時点の内容です
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