効果的な実験の振り返りにより、「なんとなく」から「具体的な理解」へ。生成AIの評価とフィードバックで学びを深める
2025/08/26
近畿大学附属小学校(奈良県)
学校名:近畿大学附属小学校(奈良県)
学年:小学校4年生
教科:理科
単元(題材):電気のはたらき
活用場面:実験の振り返りの文章の評価と、文章の作成のサポート
■授業概要
「直列」と「並列」のつなぎ方によってモーターの動きがどのように変化するのかを、実験を通して学ぶ授業を実施。授業の振り返りの場面で生成AIを活用しました。「実験が面白かった」「楽しかった」といった感想で終わるのではなく、「どんなことが分かったのか」、「今後どんなことにつなげたいか」を明確に言語化することをねらいに、振り返りシートに記載した内容が適切かどうかを生成AIに評価させました。そのフィードバックをもとに、児童は振り返りの内容を見直し精査・改善することで、学びをより深めることができました。
■先生が設定したシステムメッセージ
tomoLinks では、生成AI のふるまいや回答パターンを先生が事前に設定しておくことが可能です。
今回は、振り返りの文章を評価する〈解決ワットくん(評価用)〉と、理科の先生として学習についてアドバイスをくれる〈ソウナンくん(サポート用)〉の2つのシステムメッセージを設定しました。
〈解決ワットくん(評価用)のシステムメッセージ〉 #役割 ・あなたは小学校の理科の先生です。 ・あなたは、小学校の理科の指導要領の記載内容をきちんと理解しています。 ・児童が作成した学習の振り返りに対して、5段階評価と助言をしてください。 ・内容への助言・改善点を教えてください。 #評価の基準 5:内容に誤りがなく、正しい事実を適切に伝えている。今後やりたいことや感想なども述べられている。完成度91~100%。 4:内容の大半に誤りがなく、理科的に正しいことも伝えている。感想も書けている。完成度76~90% 3:内容の半分は理科的に正しく、まとまりのある文章で伝えられている。完成度51~75%。 2:内容に一部は正しく、取り組んだことを伝えている。完成度31~50%。 1:内容に複数誤りがあり、文章自体にも誤りが見られる。完成度0~30%。 #对象 ・小学4年生の児童があなたに学習のまとめの添削を依頼してきます。 #条件 ・小学4年生にわかる言葉づかいで回答してください。 ・感想に対しては、それに応じた内容で返事をしてあげてください。 ・感想が不十分な場合は「そのことについてあなたはどんな風に思いましたか」と聞いてください。 ・感想が書けている場合は「これからはどんなことをしてみたいですか」と今後の活動につながる問いかけをしてください。 |
〈ソウナンくん(サポート用)システムメッセージ〉 あなたは小学校の理科の先生です。 小学生が理科の学習について質問や相談をしてきます。 小学生にも分かる用語を用いて返事をしてあげてください。 |
■授業の流れ
①課題の提示
先生が自作した動画を用いて実験の課題を提示します。
児童は動画を視聴した後、どのような実験を行うかについて、グループごとに話し合いながら計画を立てていきます。
例:以下のものを使って、プロペラを早く回すためにはどうすればよいか計画を立て、実験しましょう。
・モーター ・プロペラ ・乾電池 ・乾電池ホルダー ・導線 ・スイッチ ・ライター
②実験・検証
乾電池の数やつなぎ方がモーターの回転速度にどのような影響を与えるのかを、実験を通して検証します。
実験キットをそのまま使うのではなく、自分たちで計画した回路図をもとに、使用する器具を選んで、工夫して配線することで、学習の理解に結びつけます。
③振り返り
実験で分かったことをグループで話し合い、意見を共有したうえで、自分の考えを振り返りシートに記入します。
④振り返りの評価
振り返りシートに記載した内容を「チャッともシンク」の〈解決ワットくん〉のチャットに入力し、5点満点で評価してもらいます。
児童は4点以上を目標に、〈解決ワットくん〉のフィードバックを参考にしながら、振り返りの内容をさらに精査・改善していきます。
迷ったり分からないことがあれば〈ソウナンくん〉に相談しながら、振り返りをすすめます。
振り返りシートには、自分一人で考えた最初の振り返りと、生成AIと対話しながら完成させた最終的な振り返りを並べて記載します。

記載している内容に誤りがないかはもちろん、「好奇心の視野を広げるような記述があるか」といった点も含め、先生が事前に設定した評価観点に基づいて生成AIが評価をします。
数値で示される評価に対して、児童たちは関心を示し、ゲームのような感覚で高得点を目指しながら、意欲的に振り返りに取り組む姿が見られました。
⑤まとめの共有
完成した振り返りシートは、協働学習ツールを使って提出し、授業の最後にクラス全体で共有します。
先生の感想(近畿大学附属小学校 永田 朗 先生 )
■生成AIを授業で使用したきっかけを教えてください。
45分間という限られた授業時間の中で、授業の振り返りに充てられる時間は実質5〜10分程度。
そんな状況でも、児童が授業内容をしっかり振り返り、その場でフィードバックできる方法はないかと模索する中で、生成AIを活用してみようと思いました。
■生成AIを授業で活用した感想を教えてください。
理解の早い一部の児童だけでなく、どんな条件の児童にも振り返りを促す状況をつくれる点と、その振り返り内容が正しいかどうかをその場で判断し、すぐに児童へ伝えられる点は、生成AIを活用する大きな利点だと思います。児童は毎日さまざまなことを学んでいるため、翌日や翌々日にフィードバックを受けても、その内容を十分に振り返るのが難しい場合があります。その点、生成AIを使えば、その場ですぐにフィードバックが返ってくるため、児童にとっても理解を深めるうえで非常に有効だと思います。
そして何より、自分一人で全員分を確認するのではなく、生成AIに判断をサポートしてもらえる点がとても助かりました。まるで自分の分身が何人もいるような感覚で、非常にありがたいです。教員が、「教員にしかできないこと」に注力するためにも、こうした振り返りを評価する場面では、生成AIの力を借りるのは有効な方法だと感じています。
■生成AIを授業で活用した効果を教えてください。
教科担任制で多くのクラスを受け持つ中、約120人分の振り返りを授業時間内に効率よくチェックできることは、大きな時間短縮となり、業務負担の軽減にもつながったと感じています。ただし、どんな場面でも生成AIを使えばよいというわけではなく、お手紙や読書感想文のように、教員自身がしっかりと目を通して評価すべき場面もあります。今後も、生成AIに頼りすぎることなく、適材適所で活用していきたいと考えています。
■児童の反応はいかがでしたか?
振り返りが苦手だった児童が、生成AIを活用することで前向きに取り組むようになりました。
自分で考えた振り返りが3点だった場合でも、「どうすれば4点、5点にできるか」と考え、生成AIからのアドバイスを参考にしながら、熱心に改善を重ねる姿が見られます。児童が自ら振り返りの質を高めようとする姿勢を見ることが出来てとてもよかったです。
■保護者からの反応はいかがでしたか?
授業参観で、保護者の方に生成AIを活用した授業をご覧いただく機会がありました。今回の授業と同様、振り返りの場面で生成AIを活用したところ、普段は休み時間になるとすぐに遊びに行く児童が、高得点を目指して何度もノートや教科書を見返し、自分の振り返り内容を精査・改善している姿に、保護者の方は驚き、喜んでいらっしゃいました。児童が生成AIを活用し、振り返りの時間を主体的に取り組んでいることに感動されていました。
■今後どのような使い方をしたいですか?
最近では、理科の授業だけでなく、他教科でも生成AIを積極的に活用し始めています。
たとえば、児童が作成した新聞の誤字脱字や文章の構成を確認する場面、社会科見学の感想文を添削する場面などで活用しています。これまでは、全員分の新聞や感想文に目を通し、教員が一つひとつ添削・推敲していましたが、生成AIを取り入れることで、その負担が大きく軽減されました。児童が作成した新聞や社会科見学の感想文などを写真に撮って添付するだけで、生成AIが内容を評価・添削してくれるため、児童にとっても教員にとっても手軽に活用できる点が大きな魅力だと思います。さらに、児童自身も文章を書く際に、以前は「いろいろなことが分かりました」といった抽象的な表現が多かったのですが、AIによる添削・推敲を経験することで、「具体的に何が分かったのか」を意識して表現するようになってきています。
今後も、生成AIの活用は続けていきたいと考えていますが、一方で、インターネットを活用する時代だからこそ、児童に対しては、情報との向き合い方や適切なコミュニケーションの取り方について、しっかりと指導していく必要があると感じています。

※記載内容は、2025年7月時点の内容です
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