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生成AIからの評価と助言をもとに、表現が工夫された俳句を目指す

2025/03/11

②使い方を学ぶ
③教科の学びに用いる
小学校
国語

堺市立八上小学校(大阪府)

学校名:堺市立八上小学校(大阪府)
学年:小学校5年生、6年生
教科:国語
単元(題材):「日常を十七音で」
活用場面:俳句作成のための壁打ちの相手として活用

■授業概要

5年生の国語科で学んだ「日常を十七音で」の振り返りとして、「冬にやってみたいこと」をテーマに俳句を作成しました。児童が作成した俳句を生成AIで評価し、助言をもらいながら、表現が工夫されたよりよい俳句の作成を目指しました。

また、生成AIのプロンプト(システムメッセージ)を用いて生成AIの仕組みについて説明することで、生成AIの使い方についての理解も深まりました。


■先生が設定したシステムメッセージ

tomoLinksでは、生成AI のふるまいや回答パターンを先生が事前に設定しておくことが可能です。

今回、先生は下記の内容で設定しました。


■授業の流れ

導入:俳句で使う言葉を書き出し、見通しを持つ(10分)

・tomoLinksのとも学でワークシートを配付し、授業の流れについて確認。

・俳句のモデル作品を提示した上で、「冬休みにやってみたいこと」をテーマに友達と交流しました。

・交流したことをマッピング図で書き出すようにし、書き出した言葉の中から自分が俳句で伝えたいことや、俳句で表現したいことをノートに書きました。


展開1:表現の工夫を確かめる(5分)

・5年生で学習した国語科「日常を十七音で」の学習を振り返り、俳句において求められている表現の工夫についての復習を行いました。「五・七・五音」で表現することや、「季語」を入れることを確かめました。

・モデルの作品にみられる表現の工夫を話題にし、オノマトペを入れることや、体言止めで終わること、対比表現を入れること、情景が想像できる言葉を使うことなど、既習の表現の工夫についても確かめました。


③展開2:AIの仕組みを知り、AIを活用して俳句を推敲する(20分)

・既習の表現の工夫をAIに学習させ、それぞれの観点から採点できる仕組みを作っていることを、実際のプロンプトを児童らに示しながら、説明。
使い方を例示しつつAIが助言している内容には間違いが含まれる場合もあることを確認し、あくまでも参考的に活用するように指導しました。

・よりよい俳句になるように、考えた俳句をAIに壁打ちする時間を15分程度設けました。児童らは、俳句を考え、tomoLinksに入力。生成AIのフィードバックを読むことで、よりよい俳句にしようとする姿がみられました。

・一方で、AIから出力される点数に注目が集まり、高得点を取ることを目的に交流する様子が確認されたため、点数が高いことよりも、「冬休みにやってみたいことが伝わるようにする」、「冬休みの様子が伝わるようにする」などの、俳句をかくことの目的にむけて方向付けをしました。


生成 AI の俳句に対するフィードバックの一例


全体交流:印象に残った俳句作品についての感想を交流(10分)

・他者参照を通じて、印象に残った作品はだれの作品だったかを交流。読むこと(インプット)は、tomoLinksの「とも学」上で取り組み、意見や感想を伝えること(アウトプット)は、直接友達と話して進めました。

・あるグループでは、「雪吹雪 カイロホカホカ 真っ赤な顔」をつくったAさんの作品が話題に挙がり、「雪吹雪とカイロホカホカも対比されているから、寒い吹雪と温かいカイロの様子が伝わってくる」、「上の句の雪の白と下の句の真っ赤な顔を対比的に表現されているのがいい」などと、この俳句の良さについて交流する様子がみられました。


児童が生成 AI を活用して推敲した俳句作品の例


ふりかえり:俳句の内容や学び方についてふりかえる。(5分)

・アンケートフォームを活用して、授業全体のふりかえりに取り組みました。以下のような、振り返りの観点を与えることで、生成AIを活用した学びについて自己評価を促しました。

1.生成AIを使った俳句作りは学びやすかったですか。(選択式,四件法)
2.生成AIの評価は正確だと思いましたか。(選択式,四件法)
3.生成AIの助言を参考にしましたか。(選択式,四件法)
4.生成AIをつかった俳句づくりの授業で学んだことや,感想,改善点などを教えてください。(記述式)

児童が回答した自己評価の結果(n=51)



先生の感想(堺市立八上小学校 岡田 憲典 先生)

・アンケートの結果から、授業を受けた児童の多くが生成AIによる支援について学びやすいと感じていたことがわかりました。児童のスキルやニーズに応じて個別に助言を提供できるようにAIを調整したことで、言葉の選び方や、構成、表現の工夫の仕方など、その児童にあった形で一定の学習支援ができていたと考えられます。

・AIの評価の正確さについての質問項目では、29.4%の児童がその正確性に疑問を持っていたことがわかりました。AIリテラシーの観点からいうと、AIによる採点や助言が正確ではないかもしれないと立ち止まって活用することがむしろ大切だと感じました。こうした経験を通じて、今後ますますAIリテラシーを育てていくことが必要だと実感しています。






参考: 
岡田 憲典.”授業における個別の学習支援に向けたAI活用-俳句作りとその推敲の過程を通して”
学習情報研究3月号


※記載内容は、2025年3月時点の内容です

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