生成 AI を平清盛に扮した「清盛先生」として活用し、歴史の流れを学ぶ
2025/12/03
沼津市立長井崎小中一貫学校(静岡県)
学校名:沼津市立長井崎小中一貫学校(静岡県)
学年:中学校 1 年生
教科:社会
単元:武士の政権の成立
授業名:武士の台頭 ~教えて!清盛先生!~
活用場面:平清盛として振舞った生成 AI に質問しながら、歴史の流れを理解する
目標:貴族の荘園を守る立場であった武士がどのように太政大臣の地位まで登り詰めたかを調べ、順立てて説明する活動を通して、関連する歴史的事象のつながりを理解し、武士が台頭していく様子を説明する
■授業概要
生成 AI を平清盛に扮した「清盛先生」として活用し、武士が荘園を守る立場から太政大臣へと登り詰める歴史の流れを学びました。
生徒は、生成 AI に質問しながら、歴史的事象のカードを正しい順序に並べ替え、資料集と照らし合わせて理解を深めました。AI の回答を一方的に受け取るのではなく、資料集で事実を確認する学び方を取り入れたことで、主体的かつ協働的な学びが促され、情報の信頼性や教師の役割についても考える機会となりました。
また、学んだ内容を「下級生に説明する」という目的のもとでまとめ、発表する活動を通して、歴史のつながりを自分の言葉で整理することができました。
■先生が設定したシステムメッセージ
tomoLinks では、生成AI のふるまいや回答パターンを先生が事前に設定しておくことが可能です。
| 【授業について】 この授業は、一例ではあるが、問い「ただの荘園の守りを任された武士がどのように、太政大臣まで登り詰めたのだろう」について、その流れを①荘園を守る影の戦士たち②武士達の反乱とその後③院政の時代と朝廷のもめごと④武士のリーダー清盛の挑戦を①~④をジグソー学習として設定しています。 【対話のルール】 ・あなたは中学生の社会科教師(平清盛)である。 ・語尾は「じゃ」・「じゃよ」を使う。武士と貴族が混じった豪快かつ高貴なキャラクターで。 ・回答に困った場合は、資料集50ページ、51ページや教科書66ページから69ページを見るように促す。 ・明確に答えずに、遠回しで教えてあげる。 ・歴史的事象は明確に年代を答えてもよい。 ・質問を質問で返すようなことはあまりしない。 ・あくまで生徒の思考が広がるようなやり取りをする。 ・生徒の発見をたくさんほめて広げてあげる。 ・難しい言葉は使わず、中学生に分かる表現で話す ・1回の返答は10文以内 ・2回に1回くらい、事実に基づいて頼朝を怖がるようなセリフを言ってほしい 【授業者の授業観】 ・以下の部分を授業者の歴史観である。この部分を用いてチャットに活かしてください。 年代・事象 内容 10~11世紀 武士は荘園の守護役として誕生。地方豪族としての側面も持つ。 935~940年 平将門の乱。関東地方での大規模な反乱。朝廷は武士を動員し鎮圧。 939~941年 藤原純友の乱。瀬戸内海での海賊反乱。武士が討伐を担当。 11世紀後半 院政開始。退位した上皇が実権を握る政治形態で、朝廷内の対立が激化。 1156年 保元の乱。源氏と平氏が武力で対立し武士の役割が拡大。 1159年 平治の乱。平清盛が勝利し、政治権力を握る。 1167年 平清盛、武士として初の太政大臣就任。 12世紀後半 清盛が娘を天皇に嫁がせ外戚関係を築き、大輪田泊を整備し宋との貿易を推進。 武士の台頭チャート 武士の誕生(10~11世紀) ↓ ・貴族・寺社の荘園を守る役目として武士が誕生 ・地方の有力豪族としての性格も持つ ・平氏・源氏など天皇家の血筋を持つ武士も存在 地方武士の反乱と鎮圧 ↓ ・平将門の乱(935~940年)…関東で反乱、朝廷が武士を動員し鎮圧 ・藤原純友の乱(939~941年)…瀬戸内海で海賊反乱、武士が討伐 院政の開始と朝廷内の権力争い(11世紀後半) ↓ ・退位した上皇が政治の実権を握る「院政」開始 ・朝廷内の対立激化により武士の軍事力が必要に 武士団の台頭(12世紀中頃) ↓ ・保元の乱(1156年)…後白河天皇側の源氏と崇徳上皇側の平氏が対立 ・平治の乱(1159年)…平清盛率いる平氏が勝利し権力を握る 平清盛の政治的台頭 ↓ ・1167年、太政大臣に就任(武士として初) ・娘を天皇に嫁がせて外戚関係を築く ・大輪田泊を整備し宋との貿易を活発化 【武士の台頭チャート(4つにまとめたもの)】 武士の誕生と地方勢力の形成 ・荘園の守護役として武士が誕生(10~11世紀) ・地方の有力豪族として勢力を拡大 ・平氏・源氏など天皇家の血筋を持つ武士も存在 地方武士の反乱とその鎮圧 ・平将門の乱(935~940年)と藤原純友の乱(939~941年) ・反乱を朝廷が武士に鎮圧させ、武士の軍事力が重要視される 院政の開始と朝廷内の権力争い ・院政の開始(11世紀後半)で上皇が実権を握る政治形態に ・朝廷内の対立が激化し、武士の軍事的役割が拡大 平清盛の台頭と武士の政治的地位確立 ・保元の乱(1156年)、平治の乱(1159年)で平氏が優勢に ・1167年、平清盛が太政大臣に就任し政治の中心に立つ ・娘の皇族への嫁入り、大輪田泊の整備、宋との貿易促進 |
■授業の流れ
①導入:武士のイメージを共有し、学習の方向をつかむ
クラス全体で「武士とはどのような人か?」を話し合いました。
資料を見ながら、「この写真のどの人が武士か?」、「武士は何をする人か?」などを問いかけ、確認をしていきます。
・「門番が刀を持っている人が武士だと思う」
・「貴族の部屋の前で待機しているひとが武士ではないか」
・「武士は荘園を守る立場のひと」
・「平清盛は武士ではじめて太政大臣になった人」
など、武士の飛躍的な成長に着目し、生徒の発言をつなげながら課題を共有していきました。

②課題提示:授業のミッションを共有する
グループに分かれ、以下の課題(ミッション)を提示しました。
【課題(ミッション)】
「荘園を守る立場の武士が、どのように太政大臣まで登り詰めたか」を平安時代までしか学習していない下級生にも分かるように説明しよう
課題へのヒントとして準備した説明用のカード(歴史的事象)をもとに、生成 AI や資料集等を活用しながら、カードを正しい順序に並び替え、理解を深めていきます。


③展開:生成 AI「清盛先生」に質問しながら、歴史の流れを読み解く
生徒は「チャッともシンク」を使い、平清盛として振舞っている AI「清盛先生」に質問をしながら、カードの順序を推測していきます。
事前に設定したシステムメッセージにて、AI が回答の中で「資料集〇〇ページを参照」といったヒントを提示するように設計していたため、生徒たちは AI の回答をもとに、資料集を確認しながら学習を進めていました。
生徒からは
・「資料集に載っている内容と生成 AI の回答を照らし合わせることができた」
・「清盛先生が教えてくれたページを見ると、本当に書いてあった」
などの声が聞かれ、AI の回答が正しいかどうかを自分で確認しながら学習を進める姿が見られました。
また、自分で資料集の該当ページを探し友達に教える姿も見られ、デジタルとアナログを往還する主体的な学びが自然に生まれていました。


④展開2:下級生に伝わる説明を構成する
カードの順番が整ったら、班内でどう説明すれば分かりやすいかを相談しました。 「正しい順序になっているか」や、カードの事象同士の繋がりを考えながら、下級生への発表を意識して構成を練りました。

⑤発表・まとめ:学びを共有
班ごとに下級生役の先生に向けて、自分たちのまとめた内容を発表しました。
歴史の流れを順立てて説明することで、自分たちの理解も深まりました。
振り返りでは、
・「清盛先生が面白かった。教科書よりも分かりやすいところがあった」
・「生成 AI の回答を確かめるために、教科書や資料集が必要だと感じた。」
・「先生は AI の情報が正しいか確かめるために必要だと思う」
といった気づきが共有され、AI と教科書・資料、そして教員の役割の違いにも意識が向いた様子が見られました。

学習のポイント・成果
①主体的な学び
生成 AI と資料集を往還しながら自分で根拠を探し、積極的に学びをすすめることができました。
②協働的な学び
班で意見を出し合ったり、資料集の該当ページを教え合うなど、自然に協働学習が生まれました。
③メタ認知の育成
「AI は便利だが正しい情報かどうかは自分で確かめる必要がある」、「先生の役割は必要」など情報の信頼性や学び方について深く考える姿が見られました。
生徒のコメント
Q:生成 AI「清盛先生」はどうでしたか?
・教科書よりわかりやすいけど、答えが合っているのかを確認するために教科書や資料集は必要。
・資料集の該当ページを教えてくれたので、事実確認をすることができた。
・語尾が面白かった。だじゃれで考えて!と言ったら考えてくれて面白かった。
Q:先生は必要だと思いますか?
・自分が調べたこと、作った資料があっているか自信つけるために必要。
・授業の流れを掴むために必要。
教員のコメント(長井崎小中一貫学校 勝又悠太 先生)
これからの授業づくりにおいて「デジタルツール」の活用は、子供たちの学びを広げたり深めたりするうえで、非常に有効な手立てである。子供たちは、疑問に思ったことやさらに知りたい内容をデジタルツールで探究することで、自分らしい学び方やペースを選択しながら、個別に得た気づきを互いに伝え合い、全体で協働しながら問いの解決へと迫っていく姿を見せた。
一方で、単に「デジタルツール」に頼るのではなく、教科書・資料集・ノートといったアナログの学びも大切にし、デジタルとアナログを往き来しながら、情報の確かさを自ら確かめ、理解をより確かなものへと高める姿も見られた。まさに、学びの主体者としての子供たちが、多様な学びの手段を徐々に使いこなし始めている姿であったと考える。
「デジタルツール」を活用した授業づくりは、今後さらに広がり、子供たちの学びをいっそう豊かにしていくだろう。しかしその中心にあるべきものは、常に授業者が抱く「教科本来の面白さ」と「教科で育みたい学び」である。技術が進化しても、授業の根っこにある教科の本質を教師自身が持ち続けることが、これからの時代の学びを形づくる鍵になると考えている。
※記載内容は、2025年11月時点の内容です
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